ポジティブになれない日まで、ポジティブに変えなくていい

ポジティブ思考って、ちょっと怖い。

最近、私はそんなことを考えるようになりました。

ポジティブでいることが悪い、という意味ではありません。私自身、ずっとポジティブでいることはいいことだと思っていました。嫌なことがあっても、できるだけいいところを見る。人の悪いところではなく、いいところを見る。起きたことを前向きに捉える。

そういう考え方に助けられたことも、もちろんあります。

でも、いつの間にか私の中で、「ポジティブでいたい」ではなく、「ポジティブでいなければならない」になっていた時期がありました。

今振り返ると、ポジティブ思考そのものが、私の中で一つの「べき思考」になっていたんだと思います。



「ありがたいと思わなきゃ」と自分に言い聞かせていた

嫌なことがあったとき。本当は腹が立っているのに、「ありがたいと思わなきゃ」と思う。

つらいと感じたときには、「もっと苦労している人がいるんだから」と考える。

何かに不満を感じても、「私は恵まれているんだから」と自分に言う。

そして、「文句を言ったらバチが当たる」「感謝しなきゃ」。

最後には、頭の中で「ありがとう」と言い聞かせる。

今考えると、ちょっと不思議なんです。

本当にありがたいと思っている「ありがとう」ではなくて、自分の中に出てきた別の感情を、正しい場所に戻すために「ありがとう」と言っているような感じです。

なんだか、謎の呪文みたいでした。

もちろん、本当にありがたいと思っていたこともたくさんあります。恵まれていると感じることもありました。

だから、その感謝が嘘だったということではありません。

ただ、本当は嫌だったり、悲しかったり、腹が立っていたりする自分もいた。

その自分に対して、「そんなふうに思ったらダメ」と言っていたんだと思います。



ありがたいことと、つらいことは同時にあってもよかった

私はここを、長い間うまく分けられていませんでした。

恵まれているなら、不満を言ってはいけない。ありがたいことがあるなら、つらいなんて言ってはいけない。自分より大変な人がいるなら、自分の苦しさなんて大したことではない。

そんなふうに考えていました。

でも最近になって、ありがたいことがあることと、つらいことがあることは、同時にあってもよかったんだと思えるようになりました。

家族がいることをありがたいと思っていても、家族との関係の中で苦しいことはある。

海外で暮らせる環境をありがたいと思っていても、海外生活がしんどい日はある。

誰かに助けてもらったことに感謝していても、その人に対して腹が立つことはある。

今ある生活に恵まれている部分があっても、「私は今つらい」と感じることはある。

どちらか一つを選ばなくてもよかったんですよね。

「ありがたいんだから、つらいと思ってはいけない」と、自分の感情を消す必要はなかった。

ここが分かるようになってから、私は少し楽になりました。



もっと大変な人がいる。それはそう。でも。

「もっと苦労している人がいるんだから」

これは、私が自分によく言っていた言葉です。

実際、世界には自分より大変な状況にいる人がたくさんいます。それはそうだと思います。

でも、その人が大変だからといって、私がつらいと感じてはいけない理由にはならない。

今はそう思います。

誰かの苦しさと、自分の苦しさを比べても、自分の感情が消えるわけではありません。

むしろ私は、比較することで自分の感情を無かったことにしようとしていたのかもしれません。

「こんなことでつらいなんて言ってはいけない」「私なんてまだ恵まれている」。

そうやって自分を納得させようとする。

でも、つらいものはつらい。嫌だったものは嫌だった。傷ついたなら、傷ついた。

そこを認めたからといって、誰かより自分の方が大変だと言っているわけではありません。

自分が感じていることを、自分が分かってあげる。ただそれだけのことだったんだと思います。



ポジティブでいるつもりで、実は取り繕っていた

以前の私は、ポジティブでいることで前向きに生きているつもりだったところがあります。

嫌なことがあっても、いいところを見る。

腹が立っても、「でも相手にも事情があるよね」と考える。

つらくても、「もっと大変な人もいる」と考える。

それが大人でいることだったり、前向きでいることだったり、人に優しくすることだと思っていました。

でも最近、あの頃の私は、本当に自由だったのかなと思うことがあります。

本当は嫌だった。本当は腹が立っていた。本当は悲しかった。

でも、その感情を一度もきちんと見ないまま、すぐに「でも」に進んでいた。

「嫌だった。でも相手にも事情がある」
「つらい。でも私は恵まれている」
「腹が立つ。でも感謝しなきゃ」

いつも後半の「でも」の方を正解にしていました。

そう考えると、私はポジティブだったというより、ポジティブな自分を取り繕っていた時もあったのかもしれません。

それ以外の感情を持つことを、自分にあまり許していなかった。

今振り返ると、それは思っていたより自由ではなかったし、結構しんどかったんだなと思います。



だからといって、ネガティブでいればいいという話でもない

ここは、自分でも間違えたくないところです。

ネガティブな感情を大切にするということは、ずっと怒っていればいいということではありません。誰かを責め続けることでもない。愚痴をずっと言い続ければ楽になる、ということでもないと思っています。

ただ、次の感情へ急いで変えなくてもいい。

嫌だったなら、まず「嫌だった」。

悲しいなら、「悲しい」。

腹が立っているなら、「腹が立っている」。

そこにすぐ、「でも感謝しなきゃ」をつけなくてもいい。

感情があることと、その感情のまま誰かを傷つけることは別です。

腹が立っている自分に気づいたからといって、その怒りをそのまま誰かにぶつける必要はありません。

でも、自分の中で起きていることまで「ないこと」にしなくてもいい。

私は最近、まずそこを分けて考えるようになりました。



「前向きになる」の順番が変わった

以前の私は、ネガティブな感情が出てきたら、なるべく早くポジティブなものに変えようとしていました。

でも今は、少し順番が違います。

「今日、私かなり嫌だったんだな」
「あの言葉、傷ついたんだな」
「本当は寂しかったんだな」

まず、そこまで。

すぐに答えを出さないこともあります。

少し時間が経ってから、「じゃあ、私はどうしたい?」と考える。

距離を取った方がいいのか。誰かに話したいのか。何かを変えたいのか。ただ今日は休みたいのか。

そのときになって初めて、次のことを考えます。

私にとって今の「前向きさ」は、嫌な感情を早く消すことではなくなりました。

自分が何を感じているのかを一度受け取った上で、そのあとを自分で選ぶこと。

今は、そちらの方がしっくりきています。



ジャーナルに「今日の気持ち」を書く理由

『心を育てる90日ジャーナル』には、毎日の気持ちを書く場所があります。

いい日だけを書くためではありません。

「今日は幸せでした」「今日も感謝しています」と毎日ポジティブな言葉で埋めるためでもありません。

今日はちょっとイライラしている。疲れている。何となく寂しい。理由は分からないけれど、気分が重い。

もちろん、今日はすごく楽しかった、でもいい。

その日の自分が実際に感じていることを、まず自分が知る。

私は、そこに意味があると思っています。

以前の私だったら、ネガティブな感情を書いたあとに、「でも、感謝しなきゃ」と付け足していたかもしれません。

今は、その「でも」を急がなくてもいいと思っています。

感謝できる日は、感謝する。できない日は、無理に感謝に変えなくてもいい。

ポジティブになれない日は、ポジティブになれないままの自分を一度見てみる。

それで少し時間が経ったら、また違う気持ちになるかもしれません。ならないかもしれません。

でも、自分が今何を感じているのかを分からないままにするより、私はその方が自分との付き合い方として自然だと思うようになりました。



ポジティブになれない日まで、ポジティブに変えなくていい

私は今でも、前向きに考えることは好きです。

いいところに目を向けることで、気持ちが変わることもあります。

感謝することで、今あるものに気づけることもあります。

だから、ポジティブ思考や感謝そのものを否定したいわけではありません。

ただ、それが「こう感じなければいけない」になった瞬間に、私は少し苦しくなっていました。

悲しい日に、悲しいと思っていい。

嫌だったことを、嫌だったと思っていい。

ありがたいことがたくさんある日でも、何か一つに腹を立てていていい。

自分より大変な人がいたとしても、自分が今日つらかったことまで消さなくていい。

最近の私は、そういうふうに考えています。

ポジティブになれない日まで、無理にポジティブに変えなくていい。

まず、「今日の私は、こう感じているんだな」と分かるところから。

私にとっては、その方がずっと正直で、以前より少し自由です。

Kaori



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海外で暮らして20年以上。

シドニー在住。

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