あのとき、違う選択をしていたら。そう思う自分も否定しなくていい

「あのとき、違う選択をしていたら」

ふと、そんなことを考えることがあります。

あのとき結婚していなかったら。

海外へ出ていなかったら。

仕事を辞めていなかったら。

夫の仕事について行かなかったら。

子育てを優先せず、自分のキャリアを続けていたら。

反対に、

あのとき海外へ出る勇気を持たなかったら。

あの仕事を辞めなかったら。

あの人と結婚しなかったら。

私は今、どこで何をしていたんだろう。

考えても答えが出ないことは分かっています。

それでも、ときどき考えてしまう。

特に40代になって、子どもが少しずつ大きくなり、自分の人生をもう一度見る時間が戻ってくると、

「私は何を選んできて、何を諦めてきたんだろう」

ということに気づくことがあります。

その中には、自分でも長い間「諦めた」と認識していなかったものがあるかもしれません。



あの頃は、「諦めた」とさえ思っていなかった

たとえば、夫の仕事で海外へ行くことになった。

自分の仕事を辞めた。

新しい国で子育てを始めた。

そのときは、

「今は家族のために」

と思っていたかもしれません。

新しい生活を始めることに夢中で、自分が置いてきたものについて考える余裕がなかった人もいると思います。

でも何年も経ってから、同じ年代の人が仕事を続けている姿を見る。

キャリアを積み重ねている人を見る。

自分の名前で仕事をしている人を見る。

そこで初めて、

「あのまま仕事を続けていたら、私はどうなっていたんだろう」

と思う。

その気持ちが出てきたとき、

「でも、自分で選んだことだから」

と、自分の気持ちをすぐに消そうとすることがあります。

家族もいる。

子どももいる。

海外で経験できたこともある。

幸せだった時間もある。

だから、後悔なんてしたらいけない。

そう思ってしまう。

でも私は、

幸せだったことと、諦めたものがあることは、同時に存在してもいい

と思っています。

家族を大切にしてきたことと、

仕事を続けたかった気持ち。

子どもを育てられた喜びと、

自分のために使えなかった時間への悔しさ。

海外へ来てよかったと思う気持ちと、

日本に残っていた人生を想像する気持ち。

どちらか一つを消さなくてもいいのではないでしょうか。



「あの人のせいで」と思う自分が出てくることもある

後悔していると、ときどき誰かを責めたくなることもあります。

夫の仕事がなかったら。

子どもがいなかったら。

親のことがなかったら。

あの人にあんなことを言われなかったら。

社会が違っていたら。

もっと環境が整っていたら。

私は違う人生を選べたのに。

そう思う自分に気づいて、

「人のせいにしてはいけない」

と、また自分を責める。

でも、ここでもすぐにきれいな答えを出さなくていいと思うんです。

本当に悔しかったのかもしれない。

本当は続けたかったのかもしれない。

誰かに、

「あなたはどうしたい?」

と聞いてほしかったのかもしれない。

自分の気持ちより家族の事情を優先したことに、今になって寂しさを感じているのかもしれない。

だったらまず、

「私、悔しかったんだな」

と気づく。

そこからでいいと思います。

誰かを責め続けることと、

自分の中にある悔しさを認めることは、同じではありません。



過去の選択を、無理に「正解」にしなくてもいい

「あの選択があったから今がある」

という言葉があります。

確かにそうです。

でも私は、ときどきこの言葉さえ苦しくなることがあります。

過去のすべてを、

「結果的によかった」

と思わなければならないように感じるからです。

本当は、

「あれはつらかった」
「できれば違う選択をしたかった」
「今でも少し後悔している」

という出来事があってもいいと思っています。

過去の選択を全部好きになる必要はない。

過去の自分を全部肯定できなくてもいい。

今の自分なら選ばないことを、昔の自分が選んでいたこともある。

それは当然だと思います。

当時と今では、

知っていることも、

経験も、

環境も、

大切にしているものも違います。

今の自分が過去を振り返って、

「もっと違う選択ができたんじゃない?」

と思えるのは、

今の自分が、あの頃よりいろいろなことを知っているからでもあります。

だから、今の自分の目で昔の自分を裁き続けなくてもいい。

あの頃の私は、あの頃の私が持っていたものの中で選んだ。

そこまででいいのかもしれません。



もし違う道を選んでいたら、本当に幸せだった?

「あのとき仕事を続けていたら」
「日本に残っていたら」
「結婚していなかったら」

別の人生を想像すると、その人生の方がうまくいっていたように見えることがあります。

でも、これは分かりません。

仕事を続けていた自分が、満足していたかもしれない。

別の悩みを抱えていたかもしれない。

日本に残っていたら、幸せだったかもしれない。

海外へ出なかったことを後悔していたかもしれない。

選ばなかった人生には、現実がありません。

だから、どうしても少しきれいに見えます。

でも、だからといって、

「考えても仕方ない」

で終わらせたくもありません。

なぜなら、

選ばなかった人生を考えるときに出てくる気持ちの中に、今の自分が欲しいものが隠れていることがある

と思うからです。

「仕事を続けていたら」と何度も考えるなら、

今の私は、仕事をしたいのかもしれない。

「もっと自由に生きていたら」と思うなら、

今の生活に、もう少し自分で選べるものが欲しいのかもしれない。

「もっと勉強していたら」と思うなら、

今から何かを学びたいのかもしれない。

後悔は、過去だけを向いている感情に見えます。

でも、その中には、

「本当はこれを大切にしたかった」

という今の自分からの言葉が入っていることもあるのではないでしょうか。



過去は変えられない。でも、ここからはまだ決まっていない

これはよく聞く言葉なので、簡単には言いたくありません。

「過去は変えられないんだから、前を向こう」

と言われても、そんなに簡単に切り替えられないことがあります。

だから、まず後悔している自分を置いていかない。

悔しかった。

寂しかった。

本当は違うこともしてみたかった。

あのとき誰かに分かってほしかった。

そういうものがあるなら、一度そこを見る。

そのうえで、

今の私は、ここから何ができるだろう。

と考える。

40代で、昔と同じキャリアを一から作り直すことは難しいかもしれません。

子どももいる。

生活もある。

海外にいる。

お金のこともある。

現実的な条件はいろいろあります。

でも、

「あの頃できなかったことを、そのまま取り戻す」

だけが選択肢ではないと思います。

今の自分だからできる形に変えてみる。

以前とは違う仕事をしてみる。

小さく学び直してみる。

昔の経験を、今の仕事につなげてみる。

自分だけの時間を少し作ってみる。

ずっと興味があったことを、まず調べてみる。

大きく人生を変えなくても、

今いる場所から選べることは、まだある。

そこを見ていきたいと思っています。



あのときの選択に、この先の人生まで決めてもらわなくていい

過去を振り返ると、

「あの選択は正しかったのかな」

と思うことがあります。

でも、もしかすると、

正しかったか、間違っていたか。

それだけで考えなくてもいいのかもしれません。

その選択によって得たものがある。

失ったものもある。

嬉しかったこともある。

悔しかったこともある。

全部あっていい。

そして、あのときの選択をどう感じているかと、

これから何を選ぶかは、また別の話です。

過去を正解だったことにしなくても、次へ進める。

後悔が少し残っていても、今の人生を選び直すことはできる。

私は、その方が自然だと思っています。

だから、もし今、

「あのとき、違う選択をしていたら」

と思っていることがあるなら、

無理に前向きな答えに変える前に、

少しだけその続きを聞いてみたい。

私は、何を諦めたことを悔やんでいるんだろう。

そして、

その中にあるものを、今の私ができる形で少し取り戻すとしたら、何ができるだろう。

過去をやり直すことはできません。

でも、過去に置いてきたと思っていたものが、形を変えてこれからの人生につながることはある。

私は、そういう可能性はまだ残っていると思っています。

Kaori



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Kaori

海外で暮らして20年以上。

シドニー在住。

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